of Service Engineering

顧客の視点を導入したサービスの品質設計

新井教授、原助教、首都大学東京 下村教授

 経済のサービス化に伴い,製品とサービスを連続的に設計する手法が望まれている.サービス工学1)は,受給者の要求を可視化し,要求に基づきサービスを評価・シミュレートすることで,サービスの設計を支援する手法およびツールの開発を目的としている.設計者がサービスの提供価値を最大化する設計案を構築するためには,サービスを定量的に評価する手法が必要である.そのため,本研究室ではサービス工学研究の一環として,サービスが顧客に提供する価値を解明し定量的に評価する手法の開発に取り組んでいる.

 これまでに,サービスの価値を「受給者の満足変化」と捉え,満足度を表現する関数の導入によりサービスの価値を定量化する手法を提案した.本手法は,モノの設計過程における概念設計と同様のやり方で,受給者の満足度を表現・評価する.従来のサービス・マーケティング/マネジメント分野における顧客価値の研究では,満足に影響する要素を抽象的な項目として捉えていたのに対し,本手法はサービスをビューモデル(Fig.1)で記述することで,受給者の価値構造をサービスが持つ機能と属性とで具体的に記述する.ビューモデルは,受給者のサービスに対する要求をRSP(Receiver State Parameter)として表し,RSPに影響を与える機能のパラメータ群をネットワーク構造として表現したものである.満足度関数は,要求と機能パラメータ値との関係を表し,設計者が受給者にアンケートを行い決定する.人間の一般的な意思決定の特性に基づいて満足度関数を決定可能にするため,狩野モデルとプロスペクト理論に基づき,Fig.2に示す満足度関数の3種類の形状を提案した.さらに,実際にアンケートに基づき満足度関数を記述し,受給者の満足度をサービスの設計者が定量的に評価できることを示した.この際,満足度関数を記述するための最適なアンケート手法を提案すると共に,得られた満足度の妥当性を直接評価との比較により示し,顧客の視点を導入したサービスの品質設計手法として確立させた.

Fig 1: View Model

Fig 2: 3 types of Satisfaction-Attribute Value Function

Keywords: Service Engineering, Product-Service System, Service Modeling


References
1) T. Sakao and Y. Shimomura: Service Engineering: A Novel Engineering Discipline for Producers to Increase Value Combining Service and Product. Journal of Cleaner Production, Special issue on sustainable production and consumption - making the connection, Vol. 15, Issue 6, pp. 590-604, 2007.
2) Y. Yoshimitsu, K. Kimita, T. Hara, Y. Shimomura and T. Arai: Proposal of a Measuring Method of Customer's Attention and Satisfaction on Services. In Proceedings of the 14th CIRP International Co nference on Life Cycle Engineering -LCE2007-, pp. 417-422, 2007.