ヒト起立動作における筋シナジー構造

ヒトの運動機能を改善するためには,運動の理解が必要である.本研究では日常動作の起点となるヒトの起立動作を理解するため,運動を計測し現象論的に解析することと,構成論的に起立動作モデルを構築することが肝要である. 特に筋シナジーと呼ばれるまとまりを持って活動する筋活動にもとづいて解析を行った. 下肢の筋活動を計測したものでは,ヒトには3つの筋シナジーが存在し(離床・伸展・姿勢制御を担当), 特に健常若年者と高齢者のシナジーを比較した研究では,高齢者では姿勢制御に相当する筋シナジーが弱まっていることが明らかになった. またヒトがどのように異なる環境に対して適応的に運動を生成しているかを明らかにするため,異なる座面高の椅子からの立ち上がり(外部環境)と運動速度の異なる起立(内部環境)を計測した.その結果,筋シナジーは環境間で共通するものの,その活性重みを変化させることで適応的な動きを達成していることが分かった. 構成論的にヒトの筋骨格モデルを構築したものでは,実際に下肢の筋を個別に制御しなくても,3つの筋シナジーを制御することでヒトの起立動作が生成されることがわかった.
    【主な文献】
  • Qi An, 石川雄己, 舩戸徹郎, 青井伸也, 岡敬之, 山川博司, 山下淳, 淺間一, 座面高と速度の異なるヒト起立動作における筋シナジー解析, 計測自動制御学会論文集, vol. 50, no. 8, pp. 560-568, 2014 (計測自動制御学会論文賞受賞). [pdf] [link]
  • Qi An, Yusuke Ikemoto, and Hajime Asama, "Synergy Analysis of Sit-to-Stand in Young and Elderly People", Journal of Robotics and Mechatronics, vol. 25, no. 8, pp. 1038-1049, 2013. [pdf] [link]
  • Qi An, Yuki Ishikawa, Shinya Aoi, Tetsuro Funato, Hiroyuki Oka, Hiroshi Yamakawa, Atsushi Yamashita and Hajime Asama: "Analysis of Muscle Synergy Contribution on Human Standing-up Motion Using Human Neuro-Musculoskeletal Model", Proceedings of the 2015 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA2015), pp.5885-5890, Seattle (USA), May 2015. [pdf] [link]

自己効力感を利用した最小不可知差異に基づくアシストシステムの設計

高齢者などの身体機能を回復するには,心理的障壁を克服し,自分が動作を達成できるという感覚(自己効力感)が必要である.リハビリなどの現場では,心理的障壁によって本来の機能を十分に発揮できないことがある. そのため本研究では,アシスト装置の軌道を徐々に被験者が気づかない範囲(最小可知差異)で徐々に変化させることで自然と心理的障壁を乗り越え,自己効力感を与えるシステムを提案した.
    【主な論文】
  • Qi An, Yuki Ishikawa, Junki Nakagawa, Hiroyuki Oka, Hiroshi Yamakawa, Atsushi Yamashita and Hajime Asama, "Measurement of Just Noticeable Difference of Hip Joint for Implementation of Self-efficacy: In Active and Passive Sensation and Different Speed", Advanced Robotics, vol. 28, no. 7, pp. 505-515, 2014. [pdf] [link]

義肢開発のための振動触覚刺激を用いた力情報フィードバックシステムの開発

従来の義手使用者は物体操作をする際に指先にかかる力を知ることができず,義手を十分に活用できなかった.本研究では振動触覚フィードバック用い,指先にかかる力を振動を通して,非侵襲で安全にユーザーに提示するデバイスを開発した. 仮想空間を構築し,実際に人が振動触覚刺激を通じて指先力を知覚し,仮想空間上での物体操作を行えるか評価を行った.2週間に渡るトレーニングを通して,人は十分に触覚振動刺激から力情報を学習して,物体操作を行う精度が向上した. また実空間上でも,同様の振動触覚刺激の提示デバイスを用いて,実際の物体操作を行えるか検証した. 結果として,腕に付着させた1つの触覚振動デバイスという非常に安全でかつ単純な方法で人は有意に物体の操作性を向上させることができ,提案手法の有効性が示された.
    【主な論文】
  • Cara, E. Stepp, Qi An, and Yoky Matsuoka, "Repeated Training with Augmentative Vibrotactile Feedback Increases Object Manipulation Performance", PLoS ONE, 7(2), e32743, 2012. [pdf] [link]

音声認識システムを利用したロボットマニピュレータの制御

全身麻痺患者のように手足の不自由な人を支援することを目的とした音声によるロボットマニピュレーターの制御方法の開発を行った. 本研究では,複数の母音と音の高低,撥音の合計7自由度の入力を用いた制御を行い,異なる制御として1. 単関節制御,2. 終点位置制御,3. 複数関節協同制御の3つの制御則のパフォーマンスを比較した. ボトルを机の上から掴み,0.5 mほど離れたゴミ箱に捨てる,6本のペットボトルが入ったバッグを1.0 mほど離れた机に運搬する,倒れているボトルを垂直に立てるという異なる実験環境において試行し,それぞれの制御則のパフォーマンスを比較した. 結果として,被験者は単関節制御と複数関節協同制御に関して終点位置制御よりも,作業時間と成功率の観点で有意な結果を示した.
    【主な論文】
  • Mike Chung, Eric Rombokas, Qi An, Yoky Matsuoka, Jeff Bilmes, "Continuous Vocalization Control Of A Full-Scale Assistive Robot", Proccedings of IEEE International Conference on Biomedical Robotics and Biomechatronics 2012 (BioRob 2012), pp. 1464-1469, Rome, Italy, 2012/Jun. [pdf]