全学ゼミ 「41SI18Bからのメッセージ」

1985年頃であっただろうか,駒場の教養課程でのクラスメートが集まった席で同じクラスから5名が東京大学内に教官として残っていることが分かった.50名中5名は極めて高い.そこで,その頃,教養課程の講義として行われていた「全学ゼミ」をクラスの卒業生有志で行うこととなった.

クラスには,電気工学や機械工学を修めて製造業に就職をしたもの,建設や化学産業に携わるものが多かったが,銀行・大蔵省・商社といった工学とは離れた分野で活躍するものもいた.これらのクラスメートに,駒場時代に何を学んだか,そして大学で得たことがどのように役立っているかを話してもらうこととした.

ゼミには多くの学生が集まった.講義を聴く.その内容を最後の10分間にB5のノート用紙にその授業の感想をレポートとしてまとめる.教官はレポートを採点する.「A4用紙1枚の報告書が人生を分けることはしばしば有る」との経験から学生も教官もレポートを大事にした.そしてゼミの最後の日には,希望者と教官とが駒場の同窓会館和室ですき焼きコンパを行った.

このゼミに出席して私に会ったことから,その後,私の学科に進学し,その上,私の研究室で卒論・修論・博士論文まで書いた学生が2名いる.彼らが言うには「この先生のところで研究しよう」と思ったのだそうである.教官としてこれほどの喜びはない.

このゼミは1994年(?)まで続いたと思う.駒場の授業制度の変更に伴い,講義申告者数が減少したこともあって,自然消滅していった.

私のHomePageに「41SI18Bからのメッセージ」なるPageを置く理由は,このゼミを取った学生の中から教養課程の講義についての意見を集めたいためである.

日本の大学から教養課程がほとんどなくなった.またカルチャー講座のような講義に対する批判もある.一方で,受験勉強の高校からすべてが自由になる大学に入った学生諸君にとって,社会との関係を理解したいとの要求もある.これは今後も大きな問題であろう.幸い東京大学は総合科目という講義で,文系の人も理系の講義を,また理系の人も文系の講義を聴くことが容易にできる.

駒場の学生諸君には,そして日本の大学生皆が教養としての専門以外の勉強にがんばって欲しいものである.

「41SI18Bからのメッセージ」の元受講生の諸君,このゼミはいかなる意味があったのであろうか?何時の日か連絡して欲しい.


東京大学に今も残るメンバーは,

    新井  民夫      工学系精密機械工学専攻
    飯塚  悦功      工学系化学システム専攻
    江口   徹       理学系物理学専攻
    岡本  和夫      数理科学系数学専攻    
                                       (五十音順)
である.

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