学生諸君へ センター長新井民夫からのメッセージ 

新井センター長

大学とは受身の人には苦しい場所である。
自分から働きかけ、自分から勉学の対象を定めない限り、なにも与えてくれない組織である。それまでの義務教育あるいは高等学校までが、いわば目標設定も勉学対象も社会と学校が与えていたのと大きな違いである。大学に入学した学生諸君にとって、このことは理屈では分っていても、実感が伴わないことかもしれない。現実、周囲の友達についていけば問題ないのだから。しかし、卒業論文などで研究室に入ると、それまでの受動的な講義とは異なり、自分でスケジュールを立て、自分でテーマを探していかなければやっていけない。初めて「自分で自分のためにする学問」を体験する。

大学院に至ってはこの状況が益々強まる。
研究テーマは当然「世界一」、「世界で初めて」との形容詞がついたものとなる。それゆえ、目標設定は難しくなる。まして、人工物工学研究センターのように、研究テーマが広く茫洋としたセンターであればなおさらである。人工物工学研究センターの研究テーマは、ライフサイクル工学サービス工学デジタル価値工学共創工学、と本屋に行っても参考書を探すことが難しい「新しい分野」である。研究手法はまだ確立していない。決まった方程式を解けばよい、代々伝わっている実験装置を改良して新しい結果を出せばよい、といった「研究の進め方」が見えている研究室ではない。

このような研究センターで大学院を過ごすことは、「受身の人間」にはつらく、きつい。もし高校までと同じように、目の前にニンジンをぶら下げて馬車馬のように走りたいなら、確立された研究分野で頑張る研究室へ入るが良い。しかし、そんな開拓精神の小さな態度でよいのであろうか?

もしRACEにくるなら、つぎのことを肝に銘じて欲しい。

  • 我々は、現代社会のもつ大きな課題「人工物」に関わる問題を解決するために研究している。
  • その問題は、1日で解決するような問題ではない。特定の原因が明示的に存在する問題でもない。しかし、我々が自分たちで作り出した問題であるから、自分たちで解決出来るはずである。
  • 問題解決を探し出す研究には、広い視野で継続的に問題に取り組む勇気が必要である。

人工物工学というフロンティアへ出て行くことは、失敗するかもしれないというリスクを伴うことである。その勇気があるものが、人工物工学研究センターに集って欲しい。

(Last updated on 25-September-2002)


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