大学院に至ってはこの状況が益々強まる。
研究テーマは当然「世界一」、「世界で初めて」との形容詞がついたものとなる。それゆえ、目標設定は難しくなる。まして、人工物工学研究センターのように、研究テーマが広く茫洋としたセンターであればなおさらである。人工物工学研究センターの研究テーマは、ライフサイクル工学、サービス工学、デジタル価値工学、共創工学、と本屋に行っても参考書を探すことが難しい「新しい分野」である。研究手法はまだ確立していない。決まった方程式を解けばよい、代々伝わっている実験装置を改良して新しい結果を出せばよい、といった「研究の進め方」が見えている研究室ではない。
このような研究センターで大学院を過ごすことは、「受身の人間」にはつらく、きつい。もし高校までと同じように、目の前にニンジンをぶら下げて馬車馬のように走りたいなら、確立された研究分野で頑張る研究室へ入るが良い。しかし、そんな開拓精神の小さな態度でよいのであろうか?
もしRACEにくるなら、つぎのことを肝に銘じて欲しい。
- 我々は、現代社会のもつ大きな課題「人工物」に関わる問題を解決するために研究している。
- その問題は、1日で解決するような問題ではない。特定の原因が明示的に存在する問題でもない。しかし、我々が自分たちで作り出した問題であるから、自分たちで解決出来るはずである。
- 問題解決を探し出す研究には、広い視野で継続的に問題に取り組む勇気が必要である。
人工物工学というフロンティアへ出て行くことは、失敗するかもしれないというリスクを伴うことである。その勇気があるものが、人工物工学研究センターに集って欲しい。
(Last updated on 25-September-2002)
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