of Service Engineering

サービス工学 - 製造業製品のサービス化 -


新井教授、原助教、首都大学東京 下村教授


 社会の成熟により経済の中心はサービスへと移行し,多くの産業分野においてサービスと知識・情報がより一層重視される傾向にある.現在,日本のGDP・就業人口のおよそ7割が第三次産業(広義のサービス産業)によって占められている.日本の製造業においても,製造対象である製品そのものから,製品を介して供給されるサービス・情報による価値提供が求められる.サービス工学は,科学的・工学的アプローチの導入によるサービス産業の生産性向上のみならず,サービスによる製造業製品の高付加価値化Table 1)を目指す研究領域である.サービスは従来,物財(モノ)には無い4 つの特性(無形性,同時性,消滅性,異質性)のために工学分野では長らく研究の対象として扱われることはなく,経営学の分野においてそのマネジメントシステムやマーケティング方法が論じられるに留まっていた.これに対しサービス工学では,モノとサービスの双方を人間が造り出す人工物と考え,分析/設計対象として同等に扱う.サービス工学の研究分野は,「サービスの表現」「サービスの解析・評価」「サービスの設計」の3 つに大きく分けられる(Figure 1).そして,これらの研究成果を統合し,サービスの解析・設計作業を計算機上で支援するためのソフトウェアシステム(サービスCAD)をこれまでに構築している.

 サービス工学では,サービスを「サービスの提供者であるプロバイダが,対価を伴って受給者であるレシーバが望む状態変化を引き起こす行為」と定義する.すなわち,受給者は提供者から有形,無形の何かを受け取り,それによって,受給者の状態が変化する.これはサービスを広く捉えた定義であり,マーケティング分野における劇場アプローチによるサービス定義に近い.すなわち,劇場というサービスにおいて観客(受給者) は,役者(提供者)からへと劇という無形サービス(コト)だけでなく,舞台装置,椅子の快適さ,ホワイエの雰囲気など,モノから機能,タイミングまでを評価すると捉える.

Figure 1: Research Domain of Service Engineering
Table1: Examples of Servicification on Products

Keywords: Service Engineering, Product-Service System, Service Modeling


References
1) 新井民夫, 下村芳樹: サービス工学 -製造業製品のサービス化-. 一橋ビジネスレビュー, 2006 年 秋号. AUT. Vol. 54, No. 2, pp. 52-69, 一橋大学イノベーション研究センター編集, 東洋経済新聞社, 2006.
2) 下村芳樹, 原辰徳, 渡辺健太郎, 坂尾知彦, 新井民夫, 冨山哲男: サービス工学の提案 - 第1 報, サービス工学のためのサービスのモデル化技法-. 日本機械学会論文集C 編, Vol. 71, No. 702, pp. 315-322, 2005.